国連英検特A級に合格した話(面接編)

 

前々回から続けてきた国連英検特A級対策も今回紹介する2次の面接対策が最後になる。

国連英検特A級に合格した話(筆記編) - Unsocial Hours

国連英検特A級に合格した話(記述編) - Unsocial Hours

 

 

1次試験の結果が怪しかったので、結果が出るまで(試験日の約1カ月後)は国連英検の勉強を放棄していた。そして無事に1次通過の通知連絡を受け、喜びと落胆の双方に襲われながら、しぶしぶ勉強を開始した。この時点で2次試験までは約2週間強、まさに付け焼刃だ。

 

 

今回に関してはもはや対策と呼べるかも怪しいので、一個人の体験談としてお読みいただければ幸いだ。

 

 <目次>

  

面接の概要

 

評価項目

 

面接はネイティブスピーカー1人と日本人の専門家(外交実務経験者、大学教授等)1人が相手で、時間は約15分。面接開始後にタイマーがセットされてデュエルスタートだ。

 

 

評価項目は以下の4つだ。2のSpeakingは3つの項目に細分化される。比重はそれぞれ25%ずつ、各項目10点満点で、全体で平均8点以上取れば合格となる。

 

1)Comprehension(理解力)

2)Speaking

  ・Pronunciation(発音)

  ・Fluency(流暢さ)

  ・Structure(構文力)

  ・Vocabulary(語彙力)

3)Communication(コミュニケーション力)

4)Knowledge(international affairs)(国際知識)

 

 

面接シート

 

受験者は面接室に通される前の待合室で、事前に面接シートなるものの記入を求められ、入室後に面接官に手渡すことになっている。記入項目は、家族構成、住所、職業、特技、学生時代の専攻、趣味・関心のあること、好きな作家・愛読書、尊敬する人物、海外経験、訪れたい国の10項目だ。

 

 

面接官は多くの場合、このシートの記載内容を参考に質問を行う。つまり、こちらである程度、質問内容を誘導できるのだ。短い対策時間で面接を突破するにはこれを生かさない手はない。逆に言えば、答えられないことは書かないことが大事だ。例えば海外経験がある人の場合、その国の情勢について突っ込まれて困るようならあえて正直に書く必要はないだろう。

 

 

また、面接官2人に対し、こちらが記載するシートは1枚で、私が面接に臨んだ際も片方の面接官がシートを確認した後、もう1人の面接官にパスしていたように見えた。そのため、ぱっと見で面接官の頭に残るよう各項目は単語レベルで大きく分かりやすく書くことをおすすめする。

 

 

私の場合は、家族構成、住所、職業、学生時代の専攻、尊敬する人物、訪れたい国に加え、趣味・関心の項目にUS-China relation, future US-Japan relation, newcoronavirus とでかでかと書いておいた(実際にこの中からの質問もあった)。

 

 

ちなみに、待合室での時間はあまり多くなく、運営側から面接シートの記入を急かされる場合もあるため(他の受験者が実際に急かされていた)、あらかじめ記載内容を準備しておくとベターだ。

 

 

 

面接対策

 

質問の傾向

 

面接の概要がつかめたところで、次は実際の対策についてだ。まずは質問の傾向や内容を探るため、合格体験記を読み漁った。

 

 

まず分かったことは、どの受験者も何らかの国連関連の質問を受けている。国連英検という試験の性質上、これは当然といえば当然だが、おそらく面接官は何かしらの国連関連の知識を問うよう指示されているのではないかと思う。私がネットや合格体験記をみて把握した限りでも、以下のような質問が過去になされたようだ。

 

・国連の目的

・現在の国連加盟国数

・グテーレス事務総長について

・国連のアフリカへの貢献、例としてコンゴへの貢献内容

・高齢者ケアに向けた新たな国連機関の設置に関するアイデア

・最近の国連の活動で気になること

・国連が貢献していると思うこと、逆に貢献できていないと思うこと

・最も効果的に活躍していると思う国連機関

・国連の組織はこのままでよいか

・国連機関で働くなら、どの機関で働きたいか

 

 

正直、国連関連知識に関する質問を読み切ることは難しいと思うが、その年のイベント的に聞かれやすい項目は最低限、準備しておく方がよさそうだ。

 

 

次に、国際情勢関連の質問だが、過去の体験記を読む限り、ロヒンギャ移民・難民問題、環境問題、AI・テクノロジーの発展、人権、少子高齢化格差社会についてなどが頻出度の高い分野のように見受けられた。しかし、これは各受験者が面接シートに記載した内容が聞かれただけの可能性もあるため、面接官がこれらのテーマについて積極的に質問を行っていると結論づけることは難しい。だた少なくとも比較的多くの受験者がこれらのテーマについて解答しているということなので、これらの分野について自らが解答する際は、他の受験者との差別化を意識してより詳しく説明した方がよさそうだ。

 

 

これらに加えて、最後に何か話したいことはあるか?という質問を受けたと答えている受験者を多く目にした。おそらくこれは時間が余った場合や、面接官側の質問が尽きた場合になされる質問だと思うので、この質問が来たとき用の回答を1つ準備しておくといいかもしれない。

 

 

対策方針

 

質問の傾向がつかめたところで、次は面接に臨む上での方針・戦略についてだ。上述の通り、1次試験の合格通知から2次の面接までは2週間強しかない。面接の評価項目を見る限り、2番目のSpeakingセクションにおける発音・流暢さ・構文力・語彙力あたりをたった2週間で劇的に変えることはおそらく難しいだろう。また、聞かれうる国際情勢全てを網羅することも不可能に近い。

 

 

面接シートである程度、質問内容を誘導できるという前提を踏まえれば、この2週間でできることは必然的に自らの得意分野に関する質問への回答準備を徹底することにおおむね限られる。他の分野については、上述した例年聞かれやすいテーマやその時点でホットなテーマに絞り、その他の細かい分野については潔く切り捨てることをおすすめしたい(だいぶ勇気がいるが、、)。

 

 

ここまでくれば、あとは1次の記述対策と同じで、私の場合は得意分野での回答や想定される質問をとにかくワードにまとめた。この作業を行うにあたっては、回答の原稿を作るというより、自分が話すつもりの内容を箇条書きするだけでいいように思う。私の場合、原稿のようなカンペを作るのに必死で、結局内容が頭に入らないまま本番を迎えてしまった。最後に何か話すことはあるか?という質問に対する回答や、これだけは外せないというテーマでの鉄板ネタくらいは丸暗記しておくと便利かもしれないが、それ以外の分野についてはパニック防止程度の感覚で用意することをおすすめする。

 

 

戦う相手は誰か?

 

ここまで色々と書き連ねてきたが、正直言うと、私は2次の面接については最初からあきらめていた。準備期間が短く、自分が対策した以外の分野に質問が集中すれば詰むのは目に見えていたし、何より他の受験者のレベルに圧倒されていた。

 

 

最初のきっかけは1次の試験会場だ。この試験のレベルを考えれば不思議ではないが、英語の試験会場で初めてネイティブの受験者を目にしたのだ(楽し気にトイレで英会話していた)。仮に1次が受かったらこのネイティブたちと面接で比較されるのかと思うと大いにやる気をもっていかれた。

 

 

また1次合格後にツイッターで突破報告を行っている人々の中にはTOEFL110超えの方などもいた。自分の今の英語力がTOEFL換算でどれくらいかは分からないが、TOEFL110超えのすごさは十分よく知っている。ほぼネイティブだ。これらのネイティブ・準ネイティブ勢が集うような面接試験のために、たかだか2週間対策をして一体、何が変わるのだろうか?と不覚にも思ってしまった。

 

 

しかし、今こうして振り返ると、これらのネイティブ勢ははなから自分の競争相手ではなかった。これらの人々は自分が何をしようが太刀打ちできない。であれば、自分にとっての真の競争相手は、自分と同程度の英語力を持つ受験者たちだ。これらの受験者をいかにして本番の面接で上回るか、この一点こそが何よりも重要だった。

 

 

これらの人々も多かれ少なかれ自分が上記でつづったような対策をしてくるはずだ。逆に言えば、何をすればこれらの人々と自らを差別化できるのだろうか。この疑問を解決する上で最も役立ったのが、以前も紹介させていただいた以下の方のブログでつづられている「うざいくらい知識を見せつける」という言葉だった。

eigoblog0405.com

 

 

この「うざいくらい知識を見せつける」というのは、評価項目の3番目「コミュニケーション力」と4番目の「国際知識」に直結する。仮に同程度の英語力を持つ受験者2人がいたとして、面接官からの質問に1問1答で答える受験者と、質問に対し少なくとも数分は話し続ける受験者とでは、印象が全く異なる。後者は自ら積極的にコミュニケーションを図ろうとし、知識という観点でも前者を大きく突き放すだろう。

 

 

面接当日

 

上記の対策を意識した上で、実際の面接当日の流れを以下に紹介する。

 

 

面接シートの記入もあるため、当日は試験開始の15分前くらいに会場に到着した。

 

 

受付を済ませ、待合室での待機を命じられた私は、とりあえず一番人が少ない待合室を選び、渡された面接シートの記入を始めた。もちろん記入内容はあらかじめ決まっているため、ささっと書き終え、呼ばれるのを待った。

 

 

先に待合室にいた受験者は、運営が呼び出しに来た際に面接シートの記入が終わっておらず、何回か催促されていた(ずいぶん細かく書いている、あるいは記入内容に悩んでいる様子だった)。

 

 

そうこうしているうちに私も運営側から呼ばれ、面接室の前に案内された後、中から呼ばれるまで椅子に座って待つように指示された。

 

 

横を見ると、小学校高学年くらいの女の子が隣の部屋の前の椅子で自分と同じく呼ばれるのを待っていた。まもなく自分の面接室から前の番の人が終わって出てきたが、今度は白髪のお年寄りだった。予想はしていたが、まさに老若男女の受験者がいるらしい。

 

 

この時点で年甲斐もなく相当緊張しており、カンペの内容などほぼ頭からふっとんでいたが、しばらくして中から声がかかり、自分の面接が始まった。

 

 

面接官は心地よい英国アクセントの若い女性と60代くらいの日本人男性(いらゆる日本人英語)の2人だった。おそらく日本人男性の方が外交実務経験者などの専門家だろう。緊張もあってあまり詳細な会話内容までは思い出せないが、とりあえず思い出せる限りの質問と回答を以下に記載する。質問者についても(英)→ 女性、(日)→ 男性 という形で付記しておく。

 

 

Q1)自己紹介をお願いします(英)

 → 名前、職業、業務内容を簡単に説明。

 

Q2)最近気になるニュースはあるか?(英)

 → 最近読んだ北朝鮮でのコロナの状況に関するニュースの概要を説明(自らの業務内容的に聞かれると予想していたので、これについてはカンペ通り)。

 

Q3)国連はコロナ禍でさまざまな対応を行っているが、主な取り組みを教えてほしい(英)

 → WHOが保健対応のガイドラインを日々発信しており、テドロス事務局長を中心に定例記者会見で最新のモニタリング状況を伝えていることを説明(緊張でこれだけにとどまってしまったが、本来であれば、WFPがコロナ禍の難民支援でノーベル平和賞を獲得したことや、UNICEFの取り組みなどについても触れればよかったと反省)。

 

Q4)WHOは中国の傀儡だという批判がなされているが、それについて同意するか?(日)

 → WHOのパンデミック宣言が遅れた点やテドロス事務局長が中国の対応を賞賛した点に触れた上で、テドロス事務局長の出身国であるエチオピアは中国から多くの資金援助を受けており、それを理由に中国の味方についた可能性はあると説明。しかし、それは初期段階の話で、一連の批判を受け、WHOは対応を見直しており、その一環として武漢に発生源調査チームを送ることが決まったことを説明(初の日本人側からの質問ということもあり、ここは「うざいくらいしゃべり倒す」ことを意識)。

 

Q5)中国の台頭が近年、大きく注目されている。米国では大統領選が行われ、バイデン氏が大統領に就任し、大きな転換点を迎えている。このような状況下で、中国の台頭は米国の新政権、また今後の日本にとって問題や脅威になると思うか?(日)

 → 中国は多くの面で問題をもたらしている。南シナ海での軍事活動、米中貿易戦争、外国企業への技術移転の強要、知的財産権侵害などの問題が報告されており、直近では香港国家安全法が施行された。この問題を巡り、2020年夏に開かれた国連人権理事会では、53カ国が中国の動きを支持した一方、反対したのは27カ国にとどまった。支持した53カ国の大半は、中国の世界的インフラ構想「一帯一路」で中国から資金援助を受けるアフリカ諸国であり、国連加盟国内部でも西側諸国と中国との間の対立が浮き彫りになっている。国連が中国との新たな政治闘争の場になりつつある点は、少なくとも日本や米国を含む西側諸国全体にとって大きな問題だと思う(いうまでもなく後半は全てカンペから引用。論理はめちゃくちゃだが、とにかく知識量をみせつけることを意識)。

 

Q6)自分の仕事の業界は今後どうなると思うか?(英)

 → 国際情勢を分析する上で近年フェイクニュースの存在が多く指摘されるようになった。これらのフェイクニュースを見抜くためにも、特定の国に偏らない中立性が重要になってくると思う。これらの中立性を維持する上では国際的に独立した第三者機関の存在が不可欠だが、それを担う選択肢の一つに国連が挙げられる。国連のような国際機関が指導的役割を果たし、情報の取捨選択の質を上げていくことが課題になると思う(こちらは予想外の質問で、その場で適当に話さざるを得なかった)。

 

Q7)近年AI、ドローンなどのテクノロジーが発達しているが、国連はこれらのテクノロジーの発達について何らかの規制を設けるべきか?(日)

 → 例えばAIについては、AIの発達により格差が生まれるとの見解が示されている。現状、AIは導入コストが高く、富裕層や大企業のみのツールとしてみなされている。これらの層の人々や企業がAIを活用して利益を拡大すれば、導入できない貧困層や中小企業との格差が拡大していく。このような格差を防ぐためにも国連のような独立した第三者機関が国際的な規制を設け、AIの平等な利用を促進することは一つのアイデアとして考えられる(AIについては例年の質問傾向から予習済みだったので、ここも予習内容を思い出すように唱え続けた)。

 Q)ドローンについてはどうか?例えばドローンを使った戦争などについても、国連は規制を設けるべきか?(日)

  → 実際に中東諸国などの紛争地域では毎日のようにドローンを使った戦いが行われ、人的被害が出ている。ドローン同士が戦うことで人的被害が抑えられるのであれば、それについて規制を課す必要はないと思う(ドローンは対策外だったため、とりあえず当たり障りない内容をその場で回答)。

 

Q8)近年、追跡アプリが普及しているが、これに対しては規制を設けるべきか?(日)

 → コロナ対策においても追跡アプリは濃厚接触者の特定などで大きな役割を果たしている。一方で、パンデミックの初期段階では、欧州諸国で追跡アプリ導入論が浮上した際、プライバシーの問題を巡り大きな議論が生じた。追跡アプリによって収集されたデータが適切に管理され、プライバシーの侵害につながらないと保証できるのであれば規制は不要だが、その危険性があるなら規制は設けるべきだと思う(こちらも予想外の質問だったが、奇跡的に欧州のニュースには詳しかったため、その場で思い出せる限りの知識を披露)

 

 

最後の質問に答えている途中でタイマーが鳴り、答え終わった段階で面接終了となった。

 

 

このやりとりからわかる通り、ネイティブ側の質問は一般的な内容が多く、国際情勢などは全て日本人側からの質問となった。正直、日本人側の質問は、いかにも日本語をそのまま英語にしたような長めの質問が多く、少々理解しにくい部分もあったが、そこは意地で質問意図を汲み取った。

 

 

国連関連の質問がコロナ関連だったことは単に運が良かった。また面接シートに書いた中国関連の質問がなされたことも自分的にはありがたかった。AI・ドローン関連の質問は予習していなかったら相当やばかった。それ以外の予想外な質問はそこまでトリッキーなものでなかったのが救いだ。

 

 

全体の感想として、体感的に15分はあっという間だった。どれくらいあっという間かというと、最後に何か話したいことはあるか?という質問がなかったくらいには回答に夢中になっていた。終わった後、正直、自分が話しすぎてしまい、相手側にうんざりされたのではないかという不安がよぎった。「うざいくらい知識を見せつける」という方針を意識しすぎて、最低限必要なコミュニケーションをないがしろにしてしまったのではないか、そんな気持ちでいっぱいだった。

 

 

しかし、ふたを開けてみれば、コミュニケーションの評価項目は「8」と合格点をもらえていた。また国際知識も「8」となり、この2つの点が合否を分けた。聞かれるか分からないSDGsの分野の知識補充を捨て、自分が話したいことに特化したことが功を奏したのかもしれない。

 

 

おわりに

 

気軽な気持ちで受験を決めた今回の国連英検だったが、知識補充や記述・面接対策など、想像以上にハードなものとなった。投じた時間は間違いなく過去最多で、合格時の達成感はすさまじかった。合格体験記で、この試験を通じて自らが成長したという意見を多く目にしたが、まさにその通りだった。これに受かったことで何か自分の道が今すぐに開けるというわけではないが、これをやりきったという事実が大きな自信となったのは間違いない。

 

 

そのハードさゆえに気軽な受験は勧められないが、これからこの試験に挑む方々にとって、今回の自分の経験が少しでも何かの役に立てば非常に嬉しい。

 

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

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