あんそーしゃる

世界の動きと日常

日本語わかる奴だせはパワハラか

 

先日、話題になった河野太郎大臣のパワハラ疑惑について個人的に思ったことをつづってみようと思う。

 

ほんとはこの記事は昨日投稿する予定だったのだが、菅首相の突然の辞任発表で下記の記事を先に投稿したりしていたら、河野氏が総裁選立候補を表明したので、ある意味タイミングとしてはよかったかもしれない。

菅首相辞任への海外主要紙の反応速報 - Unsocial Hours

 

河野氏パワハラ疑惑をめぐっては官僚数名との間で行われたオンライン会議の音声を週刊文春が入手し、以下の記事で報じたことで、一時ツイッターのトレンドになるほどの反響を呼んだ。

河野太郎大臣パワハラ音声 官僚に怒鳴り声「日本語わかる奴、出せよ」 | 文春オンライン

【パワハラ音声入手】菅「錯乱」と河野パワハラ音声 | 週刊文春 電子版

 

ネット上では報道内容がパワハラに当たる当たらない、情報漏洩に当たる当たらないなど、賛否両論の意見が出ていたので、改めて問題を整理した上で個人的な意見を述べたいと思う。

 

 

<目次>

 

問題のあった会議とこれまでの経緯

 

今回の騒動を理解する上では、公平性の観点から会議当事者の構図・立場を理解する必要があるため、まずは会議までの背景を簡単に整理したい。

 

記事にある通り、問題の会議は「再生可能エネルギーの規制改革に関する河野規制改革相直轄のタスクフォース」内で行われたもの。

 

このタスクフォースがどういうものかというと、環境にやさしい再生可能エネルギーを日本ももっと使っていきましょうよ、という目標の下、河野氏が昨年12月に立ち上げた対策室。

 

河野氏はもとより脱原発を強く掲げてきた。原発をなくすということはその分の発電量を他の方法で賄わないといけない。

 

日本は3.11の原発事故以降、原発依存を減らそうという動きから火力発電への依存が大幅に増すことになるが、火力発電はCO2排出量の観点で世界的なエコ政策に逆行しており、日本の代表的なエネルギー問題とされてきた。

 

そのため、河野氏含む政府は火力発電に代わる発電方法として、再生エネルギーを用いた環境にやさしい発電の促進を目標に掲げてきた。

 

河野氏はこの再エネ活用の促進にかなり力を入れており、どれくらい力を入れてきたかというと、Youtubeで自らチャンネルを作り、そこで官僚や有識者を交えて公開オンライン討議を行うほどだ。

【LIVE配信】第14回 再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース - YouTube

 

動画は生配信され、全国民が視聴可能なため、霞が関では恐れられているらしい。

通用しない官僚答弁 霞が関で恐れられるユーチューブ生配信とは | 毎日新聞

 

脱原発という自らの目標とCO2削減という政府の目標を両立させるには再エネ利用はマストといえるので、当然といえば当然の姿勢だろう。ちなみにこれらの生配信の中での河野氏は落ち着いていて、パワハラ的な言動をするようなそぶりは感じられない(国民が見ているので当たり前だが)。

 

このような背景の中で行われた今回の会議は、「エネルギー基本計画」と呼ばれる政府のエネルギー政策の基本方針を刷新する取り組みの一環で行われたもの。具体的には基本計画の原案を官僚側が河野氏に提示し、内容を確認・すり合わせする流れだ。この計画は閣議決定、すなわち閣僚全員の同意が必要のため、河野氏の了解も必須。そして、このやりとりの中で河野氏が問題の「パワハラダメ出し」を行ったとされている。

 

実のところ、この会議に出席した河野氏と原案を提出してきたエネ庁幹部官僚らは真逆の考え・立場を有しており、つねづね衝突を繰り返してきた。脱原発・再エネ促進を目標とする河野氏に対し、経産省傘下のエネ庁は原発維持を従来から掲げており、真っ向から主張が対立しているのだ。

エネ庁、譲れない「S+3E」/河野氏TFと攻防、容量市場凍結も拒否 | 電気新聞ウェブサイト

玉川徹氏、河野太郎氏の「パワハラ」文春報道に「相手はエネ庁次長…こんなのパワハラって言わない」(スポーツ報知) - Yahoo!ニュース

 

実際、この会議で官僚側が提示してきた原案の中身も再エネ利用に消極的な文言が目立ち、それについて河野氏が激怒するという流れとなっている。いわば、対立は不可避の構図なのだ。

 

河野氏側から見れば、自分の了承が最終的に必要な資料にもかかわらず、エネ庁の官僚が自分の意見が全く得られないような原案を出してきたため、なめてんのか?と言わんばかりに怒りをあらわにしたわけだが、エネ庁はもともと経産省の所管。そして経産省の元締めは「原発の最大限の活用」を掲げる梶山経産相脱原発」の河野氏とは完全に真逆の思想の持ち主

梶山大臣「原発の最大限活用も視野」脱炭素化で|テレ朝news-テレビ朝日のニュースサイト

 

実際、エネ庁のHPにも原発について原発をまったくのゼロにするのはどうしても難しいのが現状です」と明言しており、河野氏の立場との食い違いは歴然。

資源エネルギー庁がお答えします!~原発についてよくある3つの質問|スペシャルコンテンツ|資源エネルギー庁

 

つまり、河野氏は今回の会議において、自らの宿敵(梶山経産相)の下っ端(エネ庁官僚ら)相手に「なんでオレの言う通りにしないんだ!」と激昂しているということになる。実際、音声の中でも官僚側が「(上司の)梶山経産相に相談したが応じられない」と説明しているが、それについて河野氏が一方的な拒絶を示すというやりとりの流れが記録されている。

 

官僚側からすれば、河野氏の主張通りの原案を作ったりすれば、自らのボスである梶山氏から今度は同じようにキレられ、下手をすれば人事やキャリアにも影響が出るだろう。そのため、ここは河野氏と梶山氏で冷静に議論し、方針を定めてから官僚に原案を作らせるというのが最善と考えられる。

 

この議論をまさに行っているのが、先のYoutubeチャンネルの公開討議であり、その中でも河野氏は出席省庁の幹部に再エネ推進への消極姿勢について憤りを示しているのだが、今回の騒動では非公開の議論の場で語気を気にせず全開で怒りをぶちまけたところを見事に週刊誌にすっぱ抜かれてしまったというわけだ。

 

環境と経済はトレードオフの部分も多いので、どちらの立場が正しいというものでもないが、本来であれば、互いの立場を理解した上で妥協案を練り上げねばならないところを、河野氏が意見を曲げないどころか、パワハラ的な態度があまりに目立っため、官僚側がしびれをきらして週刊誌に会議の中身をリークしたというのが実情だと思う。

 

官僚側からすれば、リークして河野氏の立場が危ぶめば、エネルギー政策で自分たちの立場を守れるだけでなく、自分たちへのパワハラも抑制できるというお得感しかない。また自分たちへのパワハラをよそに国民から支持を得ている河野氏のことも気にくわなかったのかもしれない。

 

 

問題の音声について

 

背景を整理した上で、肝心な音声の中身について考えたい。

 

ネット上では、あくまで記事の中の文字だけを見てパワハラには当たる当たらないという議論がなされている印象だったので、文春が公開した音声を直接聞いてみた(要会員登録、7日間無料)。

 

結論から言うと、普段の河野氏のトーンからはだいぶかけはなれた荒々しい口調でぶちギレていた。やや恫喝に近いといってもいいかもしれない。

 

テンションの度合いでいうと、ワンピース序盤で白ひげが赤髪と直接話し合いをした際にキレた時くらいだろうか。

 

音声は文春の会員のみ視聴可ということなので詳細は語れないが、まず記事にある通り、「はい次。はいダメ」といった感じで自らが受け入れられない官僚側の主張は聞く耳持たず。それから問題の「以上」か「程度」かをめぐる議論で例の「日本語わかる奴、出せよ」発言が飛び出す。

 

また何より目立ったのが、言葉遣いの悪さ。「みてえな」「~したんだろうな?」「~しろよ!」「~じゃねえか」などの言葉を声を荒げて連呼するなど、普段の有識者との協議からは想像がつかないような口調が目立った。

 

まあそもそも河野氏は過去にも自分の答えたくない質問を投げかける記者に「次の質問をどうぞ」の一点張りで謝罪する羽目になったり、韓国大使の発言をさえぎり怒りを示すなど、これまでも短気な側面が垣間見えてはいた。

「次の質問どうぞ」を河野外相が謝罪 ブログで「反省」:朝日新聞デジタル

「極めて無礼だ」河野外相 韓国大使に抗議 | 注目の発言集 | NHK政治マガジン

 

しかし、霞が関働き方改革を推進する立場につき、国民からも一定の支持を得ていただけに、このような形で高圧的な態度を取っていたというのが個人的にそこそこ悲しかった。国民から信任を得ている河野氏がこれなら議員全員パワハラ気質なのではないかとさえ思う。

 

霞が関のブラックさを代表する要素の中に、理不尽な上司からのパワハラが挙げられるが、各省庁の幹部が日々こんな風に議員からパワハラめいた言葉を浴びせられていたら、その幹部が部下にパワハラし、それが繰り返され、省全体がパワハラ気質になるのはある意味、納得のいくことのように感じられる。

 

 

ネットの反応について

 

河野氏の今回の発言の他にもう一つ個人的に気持ち悪く感じられたのがネットの反応だ。

 

ツイッターやヤフコメなどをみると、想像以上に河野氏を擁護する声が多かった。特に多かったのは以下のような意見だ。

 

・これはパワハラには値しない、これくらい一般的な組織でもよくあること

・実績を残している河野さんならこれくらい許される

パワハラ云々より情報漏洩したことの方が問題

 

 

まずパワハラかどうかに関しては、是非とも音声を聴いてみてほしい。文字と音声ではだいぶ印象が違ったからだ。

 

2番目の「河野さんだからOK」のような意見に関しては、実績を残していればパワハラしてもいいというような主張なので正直一番どうかと思った。自分の会社などでもこれくらいはよくある、というのも、パワハラ度合いでのマウントの取り合いなので不毛すぎる。

 

最後の情報漏洩に関しては、まったく別の議論なのでなんとも言えないが、リークがなければ今回の河野氏の振る舞いを知ることができなかったので個人的にはありがたかった。

 

 

より本質的な問題

 

実のところ、個人的に一番問題に感じられたのは、河野氏の言動というより官僚との議論・交渉の進め方だ。

 

河野氏が敵対する省庁の官僚にレクを行わせ、相手の立場を激しい言葉とともに一方的に突っぱねた点は上述の通りだが、そもそも議論のテーマだったエネルギー基本計画は経産省が所管して決めるものであり、内閣府の規制改革担当大臣を務める河野氏には内容に口を出す権力がない。呼び出した官僚の最終的な上司も梶山経産相であり、河野氏ではない。

 

ただ河野氏は「縦割り行政をなくす」というスローガンの下、菅首相が直々に設置・抜擢した規制改革担当大臣のため、省庁間の壁を壊して規制改革を行なっていくことに大義名分がある。

 

それゆえにYoutubeチャンネルで生配信での公開討論会を日々行い、国民に見える形で規制改革を進めている様子をアピールするまではよかった。

 

ただ省庁間の隔たりはそう簡単には覆すことができなかった。いくら討論会を行っても脱原発や再エネ利用をめぐる互いの意見の相違や溝が深まるばかりでなかなか前進が見られなかった。

 

その結果、河野氏は今回明らかにされた非公開の場で相手側の官僚を呼び出し、パワハラじみた言葉で怒鳴りつけ、原案が自らにとって都合の良い中身になるよう無理強いした。

 

リークされた音声の後半では、河野氏は自らの脱原発という考えを擁護するのに、安全保障や防衛の観点を持ち出して官僚をまくしたてる様子も記録されている。

 

口を出す権限もないエネルギー分野の計画の原案について、自らがこれまで歴任してきた安全保障やら防衛やらの観点を持ち出し、それらを踏まえてモノを言えというのはあんまりだ、官僚側もそう感じたからこそ週刊誌へのリークを行ったのだろう。

 

河野氏はもう少し理詰めで冷静な人物なのかと勝手に想像していたが(過去の振る舞いから見てそれは考えにくかった)、河野氏流の規制改革の仕方は権力と立場に物を言わせた力業だということなのか。ネットでは「規制改革を進めるならこれくらい強引の方がいい」という声もあったが、強引=自分以外の考えの否定にはならないのではないだろうか。

 

これらの側面が垣間見えたからと言って、ツイッターなどのSNSで国民と積極的にコミュニケーションを取り、お茶目な様子を見せる日々の河野氏の姿が失われるわけではないので、河野氏への支持基盤が揺らぐわけではないだろうが、「ホワイトな霞が関」の実現がまた一つ遠のいた感は否めない。

 

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

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