Unsocial Hours

諜報員の日々のつぶやき

「鬼滅の刃」とワクワク感の変化

 

お疲れ様です、かるなです。

 

 

最近コロナ疲れ(?)によりニュースから少し離れており、代わりにストレス発散も含めて、今流行りの鬼滅の刃週刊少年ジャンプ)を読んでみました。今日はその感想になります。

 

 

※以下、ネタバレ含む恐れがあるのでお読みいただく場合は、ご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回私はこの鬼滅の刃という作品をアニメで観た後、20巻まで止まることなく一気に読み進めた。たしかに面白かった。一方で、この作品も最近流行りの「恐怖感」を利用した作品だったなぁとつくづく思った。

 

 

より厳密にいうなら、「人類が未知の敵にグロテスクな描写とともに駆逐される恐怖感」、あるいは、一人一人のキャラがどのように惨殺されるのか、といった一種の恐怖感に近いワクワク感、とでもいうべきか。

 

 

GANTZ進撃の巨人テラフォーマーズなどがその典型だ。

 

 

これらのやや青年向けの作品は、ワンピースやナルトなどの少年向け作品と異なり、強キャラが無残に殺される描写が多い。

 

 

単純なバトルのワクワク感の裏に、いままで強キャラと思われていたキャラや綺麗な女性キャラが次の瞬間にどのように惨殺されるのかというサディスティックな期待感・感情が隠れている。

 

 

この手の感情に訴えかける漫画は、刺激が強いこともあって、青年向け漫画に見られることが多く、ジャンプなどの少年向け漫画にはあまり見られない。

 

 

両者の違いの例を挙げるとすれば、進撃の巨人のリヴァイ兵長が強い巨人と戦う際に、下手したらぐちゃぐちゃに喰われるのでは?というハラハラ感とともに読み進めることはあっても、ワンピースのルフィが次の瞬間に片腕を切り落とされたり、ナミの顔がぐちゃぐちゃにされたり、などといったハラハラ感を感じながら読んでいる読者は少ないだろう。

 

 

いわゆる王道バトル漫画では、その手のアダルト誌向けのグロテスクな描写や喪失感・恐怖感に頼ったバトルというのはあまり描かれない。それゆえに「王道」と言える。

 

 

鬼滅の刃」でいうなら、物語後半、ある程度の強キャラとされる「柱」たちが、絶対的な強さを誇る上弦の鬼たちに、次々に腕を切り落とされたり、綺麗な女性キャラの首が折られたり等の衝撃的なシーンが多く描かれている。

 

 

少年向け雑誌に掲載されている手前、先に挙げた青年向け漫画ほど表現や描写はグロテスクではないものの、いかにかっこいい技などで上手くカモフラージュしても、感情の揺さぶり方は明らかに王道バトル漫画とは異なる。

 

 

ある程度、死亡フラグを立てつつ、そこそこ読者に感情移入させた強キャラたちを無残にも葬り去っていく。

 

 

個人的にその手の恐怖感だったりグロテスクな描写を用いたサディスティックな感情に訴えかける漫画自体を悪いとは思わない。バトルに緊迫感を与え、いわゆる「ハラハラ感」を演出する上で、非常に効果的なテクニックだと思う。しかし、それだけに頼る漫画は作品としてどうなのだろうか。

 

 

たとえば同じく爆発的な人気を誇り、黄金期のジャンプを支えてきたワンピースやナルトなどには、一切その手のハラハラ感、描写は含まれていない。

 

 

代わりにこれらの漫画には、壮大なストーリー・世界観がある。いわゆる「ストーリー」が面白いというやつ。

 

 

次の島に行ったらどうなるのだろう、この試験を突破したらどうなるのだろう、などといったより大きな枠でストーリーが楽しめるようになっている。もちろん一つ一つのバトルもグロテスクな描写を使わずとも緊迫感を演出できている。

 

 

ワンピースで、ノックアップストリームに乗って空島に行く時のワクワク感は今でも鮮明に覚えている。

 

 

この手の漫画は、ストーリーや世界観、キャラの性格が細かく描かれており、伏線回収も徹底されている。そのため、読んでいて矛盾を感じることが少ない。

 

 

この点、鬼滅の刃はどうだったかというと、世界観については、そもそも舞台となっているのが大正・明治の日本であるため、世界そのものへのワクワク感はない。

 

 

それは仕方ないとしても、その他の設定・キャラの性格など、細かい点の作り込みが雑に感じた。

 

 

たとえば序盤に主人公が刀を作る際、特性に合わせて刀の色が変化するとの説明がなされ、ブリーチの斬魄刀のように刀に重きがあるのかと思えば、刀は何度も折れたり欠けたりを繰り返し、当初説明があった色の変化などは大して触れられることもなく最終局面を迎える。

 

 

また敵を倒した後は、不自然にパワーアップするのを防ぐためにギャグ風なノリの修行編の話が挟まれているが、この辺りも話の都合に合わせて入れているという感じがもろに出ている。

 

 

ギャグといえば、この漫画はギャグ要素がかなり多いが、話の都合的に仕方ない部分は全てギャグシーンを用いて雑にすり合わせている印象。

 

 

物語後半は特にワンパターンで、適当に読者に感情移入させた柱をいたぶって殺し、それを強くなった主人公が倒す、というのの繰り返し。柱一人一人が持つエピソードも取ってつけたような話ばかりで深みがあるものはない。

 

 

結局、この漫画が優れている点は、いい感じに思い入れができた強キャラを行き過ぎない程度で惨殺する、というサディスティックな感情を煽る描写のみで、それ以外の設定は申し訳程度に用意した、というのが個人的な印象。

 

 

この鬼滅の刃と同じ印象を抱いたのがキングダムだ。

 

 

キングダムは世界観がもう少し大きめに描かれているものの、やっていることは鬼滅の刃と同じで、新しい戦のたびに読者が感情移入できるキャラを登場させ、グロテスクな描写とともに最後は殺す、というワンパターン。いつ死ぬのか、どのように殺されるのか、というハラハラ感のみで、ストーリーへの重みや細かい設定は適当この上ない。

 

 

またキングダムに至っては大した修行描写もないため、毎回の戦で都合よくそれぞれのキャラが強くなっていく。もちろんご都合主義を完全になくすことはできないが、もう少し丁寧に描いてもよさそうなもの。

 

 

ただ皮肉にもキングダムも鬼滅の刃と同じく爆発的人気を博しており、人々にとっていかにこの「サディスティックなワクワク感」が中毒性を持っているかが分かる。

 

 

なぜこのようなストーリー性も細かい設定も乏しく、ただちょっとバトルが過激な漫画が昨今売れるようになってしまったのか。

 

 

一つには、いわゆるストーリーや展開の面白さが優れている王道漫画が既に確立しきっていることが考えられる。

 

 

ワンピースに至ってはもはや一つの世界史のようになってしまっているし、ワンピースを世界史に例えるならナルトは日本史といったところだろうか。これらの漫画が一緒に掲載されているなかで、それとは別の新しい世界観をこれら以上の細かさで描くのは相当ハードルが高い。

 

 

また冒険・ファンタジーの世界観を作り上げることは、バトルをワクワクさせること以上に細かい設定、作業が必要となり、コスパも悪い。また魅力的な世界観の創造というのは、いわゆる「センス・才能」がないとできないことなのかもしれない。画力も求められるだろう。

 

 

設定を考えるのに多大な時間を要す上に、センス・才能も求められ、挙句、既にお手本となるような先駆者たちの作品が完成されているとなれば、必然的にそれとは違うジャンル・分野で勝負するしかない。

 

 

そして、その新たなジャンルの漫画を模索した結果行き着いた帰結の一つが、鬼滅の刃であり、キングダムであるといえる。

 

 

人々は新たな世界や冒険の舞台にワクワクする代わりに、過激な描写から得られるサディスティックなワクワク感を求めるようになってしまったのか。「次の島には何があるのだろう」というワクワク感は、「このキャラはどう死ぬのだろう」というワクワク感に変わってしまったというのか。

 

 

別に過激な描写を使うのが悪いと言っているわけではない。大事なのは、それだけになってほしくないということだ。

 

 

個人的にこの手の過激表現と冒険へのワクワク感のバランスが上手く取れていると思う作品の一つが最近のハンターハンターだ。

 

 

もともとは世界観や冒険そのものにワクワク感を感じさせる漫画だったが、最近はキメラアント編以降、過激表現も増え、当初の冒険へのワクワク感と融合して、いいバランスが取れていると思う(それ故に休載しているのが非常に残念)

 

 

また、同じく現在ジャンプで連載されているものでいえば、約束のネバーランドなんかも非常に上手い思う。農園の外の世界はどうなっているのかという冒険へのワクワク感を維持しつつ、絶対的な強さを持つ鬼と普通の子供たちの戦い、という緊迫感を兼ね備えている。

 

 

この約束のネバーランドと非常に似ているのが進撃の巨人で、約束のネバーランドをもう少し青年向けにした感じだろうか(時系列を踏まえると、進撃の巨人を子供向けにしたものがネバーランド

 

 

また個人的にこれら3作品以上に激推ししているのが、メイドインアビスという作品。この作品は冒険へのワクワク感とバトルでのサディスティックな過激さのそれぞれが極めて高い上に、非常に上手く融合している。アニメ・映画化もされているので、ぜひ機会があれば見てほしい。

メイドインアビス|WEBコミックガンマ 公式サイト

 

 

ここまで漫画評論家のようなトーンでつらつらと自分の意見をのたまわってきたが、鬼滅の刃という作品が決して嫌いなわけではない。面白さを感じていなければ、最後まで読み進めることはできなかった。

 

 

ただ連載終了が一大ニュースのように報じられるほどの名作かと言われれば、間違いなく違うと個人的には思う。

 

 

このような社会との感覚のズレが、自分の老いによるものなのか、漫画全般に対する人々の期待値の変化によるもなのかは分からない。

 

 

ただ仮に前者が正しく、周囲から老害だ、何だと言われたとしても、自分が漫画に期待するワクワク感の質はこれからも変わらないと思う。

 

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

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