あんそーしゃる

世界の動きと日常

新しい地政学

 

お疲れ様です、かるなです。

 

 

 

少しいつもより時間が空いてしまいましたが、実は連休中、こちらの本を読んでいました。

 

str.toyokeizai.net

 

 

 

この本は、気鋭の日本の国際政治学者たちが、冷戦後の「新しい地政学について論じた最新の概説書(先月発売)

 

 

 

何がすごいってその国際政治学者たちの顔ぶれが超豪華

 

 

 

JICA理事長を務める北岡伸一を筆頭に、細谷雄一田所昌幸篠田英朗など、著名な国際政治学者が結集して書き上げた作品。

 

 

 

この本の主題はずばり、冷戦が終わった今、「地政学(Geopolitics)」に再び注目が集まっていますよ、というもの。

 

 

 

地政学というのは読んで字のごとく、地理的観点から政治を考えるというアイデア・学問のこと。

 

 

 

本書冒頭(細谷教授パート)でより具体的に語られているが、一昔前までは、冷戦終結により米ソのイデオロギー対立が終わり、法の秩序・民主主義・人権など、冷戦中に西側諸国が掲げていた「リベラルな国際秩序」がその後の国際秩序を形成すると期待されていた。

 

 

 

そのような新たな秩序の下では、各国は共通のリベラルな価値観・イデオロギーを共有し、また科学技術の進歩で国境をまたぐ文化・経済的な交流が加速し、「国」という枠組みの重要性が次第に薄れていくと思われていた。

 

 

 

しかし、いざその新しい時代に入ってみると、思うようにリベラルな価値観や秩序は広まらず、それどころか、中国やロシアなどの権威主義体制は残ったまま、中東やアフリカでは紛争が絶えず、挙句、「イスラム国」などの新たなテロの脅威が出現。

 

 

 

また当初、世界を牽引すると期待されていた米国や英国は、国際社会への関与に疲弊した結果、離脱を始め、代わりに中国という正反対の権威主義国が国際社会での影響力を拡大。

 

 

 

結果として、各国は冷戦期以前のように「国」という枠組み・まとまりを強く意識し始め、国際社会の協調よりも自国の安全・安定を求める動きが加速。このような文脈の中で、再び「地理」に焦点を当てた「地政学」の重要性が叫ばれている、というのがこの本の主な内容だ。

 

 

 

上記の文脈の中で、経済、紛争、人権、国際協力などの分野がどのように発展・変化してきたか、またより細かい地域に焦点を当て、ロシア、アフリカ、中東、そして日本における地政学的な変遷を概説している。

 

 

 

 

最初にこの本のタイトルを見たとき、「今、地政学的にアツい地域はズバリ〇〇!!」みたいな内容の本なのかと思ったのだが、実際の内容は「冷戦前後から現代にかけて、それぞれの分野・地域はこんな風に変化してきましたよね」というニュアンスで各章記述されている。

 

 

 

たまたまなのか分からないが、国際協力に関する章では国際保健協力に焦点が当てられ、これまで国際社会がどのように感染症対策などに取り組んできたか、また昨今話題のWHOの変遷なども語られており、現在のコロナ危機下で読むとなかなか興味深い。

 

 

 

この本の中でも、現在の地政学的に最も重要な存在として、中国とその最大の地政学上の取り組みとされる大規模インフラ構想「一帯一路」が紹介された。

 

 

 

中国が地政学的な観点からどのように経済力を行使し、また影響力の拡大が周辺国にどのような影響を及ぼしているのかなど、中国については各章何らかの形で触れられており、地政学上の中国の重要度の大きさが伺える。

 

 

 

 

ちょうどこの本を読み終えた昨日、たまたまワシントンポスト中国の崔天凱・駐米大使が寄稿していた。タイトルは「中国への非難合戦に終止符を」

https://www.washingtonpost.com/opinions/chinese-ambassador-cui-tiankai-blaming-china-will-not-end-this-pandemic/2020/05/05/4e1d61dc-8f03-11ea-a9c0-73b93422d691_story.html

 

 

 

内容はおおよそタイトルの通りで、

 

 

武漢でコロナが発生したからといって中国を非難、補償を求めるのは「馬鹿げている」(新型インフルHIVリーマンショックの時はどこの国も補償を求められていない)

 

 

・常に中国を責めるのは「汚い政治」

 

 

・中国を責めてもウイルスのパンデミックは収束しない、米国にとっても得にならない

 

 

などの主張がなされた。

 

 

 

この寄稿の中で中国大使は陰謀論が蔓延しており、そのすべてが中国の『地政学的戦略』を指摘している」と述べており、何でもかんでも中国の地政学上の戦略とみなすのはやめろ、と苦言を呈した。

 

 

 

またこれと時を同じくして、中国の陳旭(Chen Xu)・国際機関代表部大使は6日、ウイルスの発生源に関する国際調査団による調査は、ウイルスが収束するまでは行わないとの方針を示した。

コロナ発生源の国際調査、「大流行が終わるまでない」と中国大使(AFP=時事) - Yahoo!ニュース

 

 

 

 

中国がここまで頑な態度を取っている背景には、米国のトランプ大統領やポンペオ国務長官がここ最近、武漢のウイルス研究所からコロナが漏れ出たとする見解を示し、中国への制裁実施をちらつかせていることが挙げられる。

 

 

 

ポンペオ国務長官に至っては先週末、新型コロナが武漢研究所で発生したことを示す「大量の証拠」があると主張し、話題を呼んだ。

 

 

 

しかし、最新のCNNの報道によると、ポンペオ長官は武漢研究所での発生説について「確信はない」と新たに述べたらしく、なんやねんと思わせる展開に進んでいる。

CNN.co.jp : コロナ発生源、武漢研究所の「確信ない」 ポンペオ米国務長官

 

 

 

 

また本日のウォールストリートジャーナルは、一連のトランプ・ポンペオの発言について、両氏が武漢研究所での発生説を唱えるのであれば「証拠を示せ」と一刀両断。

【社説】武漢研究所コロナ発生源説、証拠示せ - WSJ

 

 

 

一方で同紙は、「中国が何をいつ知ったのかについて世界は十分な説明を受ける権利がある」とし、中国側からの説明も求めている。

 

 

 

 

当初の書籍「新しい地政学」に話を戻すと、この中の国際保健協力の章では、コロナをはじめとする感染症対策は、各国の利害が一致しやすく、今後の「国際協調の砦」となる可能性を秘めているとする反面、各国の地政学的考慮やパワーポリティクスの影響を受けざるをえないと指摘している。

 

 

 

冷戦終結後、それまでの期待を崩す形で各国が自立の動きを強めるなか、冷戦後の「リベラルな国際秩序」の拡大を訴えてきた米国自身が、冷戦以前の「地政学的対立構造」への回帰を強め、国際協力の実現に向けた数少ない手段である保健協力の分野でも対立を示す一方、逆に反リベラルとされてきた中国が、冷戦期に西側リベラル諸国が期待していた「地政学的対立構造の消滅」を訴えている現在の状況は、冷戦期の西側諸国の指導者たちにはどのように映っていることだろう。

 

 

 

国際秩序の歴史的変遷と今後、そして地政学という考え方の枠組みを改めて整理する上で、今回紹介した「新しい地政学」は素晴らしい分析と考察が提示されていますので、是非ともオススメしたいです。

 

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

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