Unsocial Hours

アマチュア諜報員による日々の諜報活動報告です

Jan-14, 2020 - トランプ関税(ナバロ米大統領補佐官 寄稿)

 

お疲れ様です。かるなです。

 

一昨日まで沖縄にいっていたので更新が遅れましたが、昨日14日にナバロ米大統領補佐官(旧国家通商会議・現通商製造政策局 委員長)の寄稿がウォールストリート・ジャーナル(WSJ)に投稿されていたので取り上げたいと思います。

 

はじめましての方はこちらもどうぞ ↓

 

unsocial-hours.hatenablog.com

 

  

<目次>

 

ナバロ大統領補佐官とは?

 

現在、米トランプ大統領の直属の補佐官・アドバイザーとして、主に貿易・経済政策に関して助言を行う重要人物の一人です。

 

また、トランプ大統領により新設された米通商製造業政策局(旧・国家通商会議)のトップを務める人物でもあります。

 

保守的な経済政策を掲げるトランプ大統領の補佐官ということもあり、経済政策については保守的な見方を持つ人物として一般的に知られています。

 

米政府内の貿易・経済政策関連の各組織

 

ナバロ補佐官がトップを務める通商製造業政策局以外にも、現在の米政府内には、貿易・経済政策の分析・助言を行う組織が複数存在するため、それぞれの違い・特徴・役割等について簡単に整理してみました。

 

通商製造業政策局(OTMP)(旧・国家通商会議(NTC))

 

・現トップはピーター・ナバロ局長

トランプ大統領直属の通商政策統括組織として2017年にトランプ大統領が創設

・貿易や産業についての分析を国防とリンケージさせ、国家安全保障(NSC)とともに外交戦略の策定にも関与

・これまで自由貿易を推進してきた後述する通商代表部とは異なる立場を取るものと見られ、とりわけ製造業の再生に重点を置いて助言する役割を担う

・通商製造政策局(OTMP)に改組されてからは、一部影響力の低下が指摘されている

(引用元:Wiki https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E5%AE%B6%E9%80%9A%E5%95%86%E4%BC%9A%E8%AD%B0

 

通商代表部(USTR)

 

・現トップは、ロバート・ライトハイザー通商代表

・1962年にジョン・F・ケネディ米大統領大統領令で創設

・政府内に設けられた通商交渉のための機関で、長官に相当する通商代表は、閣僚級ポストで大統領に直属。大使の資格を持ち、外交交渉権限を保有

・具体的には、世界貿易機関WTO)や経済協力開発機構OECD)、国際連合貿易開発会議などの多国間交渉で米国を代表

有識者によると通商代表部は官僚機構というより法律事務所や経営コンサルタント事務所に近いらしい

(引用元:Wiki https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E5%90%88%E8%A1%86%E5%9B%BD%E9%80%9A%E5%95%86%E4%BB%A3%E8%A1%A8%E9%83%A8

 

国家経済会議(NEC

 

・現トップは、ラリー・クドロー委員長

・1993年にクリントン政権において、「軍事的安全保障」と並んで、「経済的安全保障」という考え方のもと、国家安全保障会議NSC)と同じ機能を果たすことを期待されて大統領令により設立

・安全保障、社会保障なども含めた総合的な立場から経済政策の立案、調整および大統領に助言を行う米政府の行政機関

・主な役割は、米政府内における経済政策の一貫性の維持や各経済官庁との調整・政策立案 

(引用元:Wiki https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E5%90%88%E8%A1%86%E5%9B%BD%E5%9B%BD%E5%AE%B6%E7%B5%8C%E6%B8%88%E4%BC%9A%E8%AD%B0

 

上記に加え、財政・金融政策を担当するスティーブン・ムニューシン財務長官、商工業分野を担当するウィルバー・ロス商務長官がおり、経済・通商政策に関しては、これらの人々が各々の立場を代表し、議論を進めています。

 

以前、米政府の通商政策をウォッチしていた際、もともと保守的な経済政策を掲げるトランプ陣営の中でも、ナバロ局長とライトハイザー通商代表がとりわけ保守的な思想を掲げる人物として紹介されていたのを記憶しています。

 

寄稿内容

 

ざっくり米政府内の組織を整理したところで、本題のナバロ局長による寄稿内容を見ていきたいと思います。

 

趣旨としては、トランプ大統領による各国への関税措置、いわゆるトランプ関税を正当化する内容となっていました。具体的に見ていきましょう。

 

トランプ関税には一時的な価格上昇というデメリットを上回るメリットがある

 

一般的な関税批判論者の主張は以下の通りです。

 

関税により製品材料の輸入価格が上昇 → 材料の購入価格上昇による減産 → 売上・利益の低下 → 雇用減少・失業率上昇

 

一方でナバロ局長によれば、これらはあくまで短期的な話であり、中長期的にみれば各国は関税回避のため、従来的な米国への輸出ではなく米国への直接投資(FDI)を行うようになり、結果として米国内企業の成長、雇用創出に繋がっているとのこと(米経済にとってはプラスの効果)。

 

米国外から品物を米国向けに販売・輸出すると関税の影響を受け、米国内での販売価格が上がってしまい、価格競争上、優位に立てないことから、それならいっそのこと米国内部に工場やら販売施設やらを立ててしまい(直接投資)、国境を介せず米国内部で製造・販売を行ってしまえばいい、という企業心理を利用するわけですね。

 

日本でも対外直接投資額は近年増加の道をたどっているため、これは単なる理論上の話というだけではなく、ある程度事実に基づいていると言えます。

日本企業の対外直接投資の流れは止まらない | 市場観測 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

 

自由貿易への悲観的な見方

 

またナバロ局長は、「関税批判勢力は、米国内の産業を支える良い面を見逃していることに加え、米国がオープン・トレード(開かれた貿易)の下でいかに苦しんできたかを看過している」として自由貿易の概念そのものへの批判的な見方も示しています。

 

具体的には、2000年代に中国との貿易拡大により、米国の中西部・南部を中心に多くの工場が閉鎖されたことや、それに伴い製造業に携わる数百万人の雇用が失われたことを指摘しています。

 

今年11月の大統領選を前に米国内企業からの支持を獲得しなければならない事情があるため、国内向けのアピールともとれる内容ですね。

 

安全保障面でも貢献

 

ナバロ局長によれば、関税により、中国やロシア、イランといったライバル国を撃退するのに必要な次世代兵器システムに用いられる重要な技術資産(具体的には人工知能(AI)、ロボット工学、自動運転車、量子コンピューティング、ブロックチェーン等)が中国(企業)に移転されるのを防いでいるとのこと。

 

安全保障面でも保守的な姿勢を掲げ、中国に対しても敵対的な姿勢を崩さないトランプ政権にとっては、ある意味重要な位置づけと言えるのでしょう。

 

 

上記の内容を踏まえると、今般のナバロ局長の寄稿記事は、総じてトランプ関税の正当性を主張し、保守的なトランプ政権の経済政策を支持する内容となっています。

 

WSJ自体は、もともと保守派、共和党寄りの論調のため、このような形で政権関係者の寄稿が載せられることは多く、ナバロ局長もこれまで度々寄稿しています。

 

考察

 

自由貿易の流れに逆行しているとして国際社会から批判され、日本でも問題視されがちなトランプ政権ですが、今年1月9日付の日経新聞の記事曰く、米国内の世論調査ではトランプ政権の経済政策については一定程度国民から評価されているようです。

トランプ政権の政策、「経済に貢献」7ポイント上昇 (写真=ロイター) :日本経済新聞

 

それとは別にロイター通信の記事で、トランプ関税による米企業の累積負担額は460億ドルと試算された、という記事を偶然見つけましたが、こちらはあくまでコンサル会社による試算であり、実際の国民感情的にはトランプ政権の経済政策については肯定的な意見の方が多いのかもしれません。

トランプ大統領の関税措置、米企業の累積負担は460億ドル=試算(ロイター) - Yahoo!ニュース

 

また、上記でも紹介したみずほ銀行 チーフマーケット・エコノミストの唐鎌さん(この方の経済分析には一般的にかなりの定評があるため、是非フォローしてみてください)の記事(東洋経済)の通り、日本の対外直接投資は年々増加しており、その意味でナバロ局長が言うところの関税による米国への直接投資の増加は実現しているとみられます。

 

トランプ大統領の就任以降、世界的に見ても自由貿易の流れに逆行する保守主義の動きは今や目新しいものでもなくなっており、唐鎌さんが指摘する通り日本企業も日本国内ではなく海外に成長の目を向けるようになっています。

  

関税=悪いこと、のように論じられがちな風潮の中で、米政府がどのような根拠に基づいて一連の保守的政策を支持しているのか把握することは外交上、非常に重要なことであり、またそれらの政策立案を行う人物らの考えを読み取ることができるという意味で、今回取り上げたような寄稿文は情報ソースとして大きな意義を持つと言えるでしょう(一方で全く中身のない寄稿も多く投稿されるので取捨選択が必要ですが)。

 

また、どのような背景事情があるにせよ、海外企業の買収、いわゆるクロスボーダーM&Aは現在日本企業内でも活発化しているため、就活生の方々は自らが携わらないにしても日々チェックしてみるといいかもしれないですね。